身近な野草(過去)


By Y.Sakuragi




サンシュユ ミズキ科

別名:ハルコガネバナ、アキサンゴ



中国原産、庭園樹として多く栽培される。
高さ4mに達する落葉小高木。
2〜3月に葉に先んじて黄色の小花をつけ秋に赤い実を付ける。
この果実の完熟したものの種子を抜き取って乾燥したものを
サンシュユといい、漢方では滋養強壮、収れん薬とし、
盗汗や頻尿などに3〜5gを煎服する。
民間では果実酒をつくり、
冷え症、低血圧症、胃下垂症、不眠症 などに服用する。





















フキ(キク科)



漢名の款冬(かくとう)の名は冬を喜ぶの意であるが、

本当の款冬はフキタンポポのこと。

ヨーロッパ大陸から中国にかけて分布し、日本に自生しない。

中国ではフキを食用ではなく、根茎を解毒、去痰などの薬用に用いる。

民間ではフキノトウをせき止めや痰切りに煎じて用い、

煮たものは胆石にも効くという。

また苦いことから苦味健胃にもする。

腫れ物や虫さされ切り傷には歯の生汁を外用に用いる。

ハーブキャンディーはフキタンポポの根を含む全草を主薬にしたもの。










ウメ(バラ科)



中国江南の原産で古く我が国に渡来した。

陰暦の2月を如月というが、梅見月ともいわれる。

中国では白い梅の花を蒸留して得られた液を梅露といい、これに茶を入れて飲み

渇をいやし暑さを払う時に用いられる。

漢方では未熟果実の燻製にしたものを鳥梅という。

コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などを含む。

清涼収斂薬として止瀉、解熱、鎮咳去痰、鎮嘔に用いる。

回虫駆除にも使用する。














ダイダイ(橙) (ミカン科)



インドヒマラヤ地方原産で古く中国から渡来した。

ヨーロッパではサワーオレンジと呼ばれている。

果実は冬に熟して黄色になるが翌夏には。再び緑色に戻り2〜3年落ちず

代々年を越すので「代々」といわれるようになったと伝えられている。

これが代々栄えるという縁起につながり、正月の飾りに用いられるようになった。

果皮は橙皮(とうひ)といい芳香性健胃薬とする。

未熟の果実は枳実(きじつ)といい、ミカンやナツミカンの果実も同様に用いるが、

これも芳香性健胃薬として消化不良や食欲不振に用いる。

漢方薬では四逆散や茯苓飲に含まれている。

なお、スペインでは花からネロリ油を採るために大量に栽培されている。

化粧水や酒等の香料として用いるが、ネロリ油の名は昔、イタリアの

Prince of Nerolaの夫人が愛用したところからと伝えられる。










マタタビ(マタタビ科)



山地に自生する落葉つる植物で、6〜7月の花期に

上部の葉が白色に変化して目立つ。

花は梅に似た白色の5弁花を下向きにつけ芳香がある。

雌雄異株。

果実はなめらかな長楕円形で塩漬けにして食用とするが

マタタビアブラムシが寄生すると以上に膨大し、でこぼこのある虫こぶができる。

漢方では、これを木天蓼(もくてんりょう)といい薬用とする。

体を暖める作用があり、神経痛、リウマチ、腰痛に粉末1gを1日3回服用する。

また、「猫にマタタビ」といわれるように猫科の動物が大変好んでこれをかじっては酔い

ネコの万病薬としても知られている。










ナツメ(クロウメモドキ科)大棗(果実)



南ヨーロッパまたはアジア西南部の原産。中国にも自生している。

日本には古くから渡来し「延喜式」(927年)に名が出ており

当時から食用や薬用にしていたことがうかがわれる。

果実を大棗(たいそう)といい、漢方でよく使われる。

緊張による痛みや知覚過敏などの症状の緩和、利尿、強壮の作用があり

また。他の薬物の作用を穏やかにするため、他の生薬との配合にも用いられている。

胃痙攣や子宮けいれん、不眠、小児の夜泣きには甘麦大棗湯(大棗・甘草・小麦)がよく効く。














アマドコロ(ユリ科)



山野に自生する多年草で、根茎を「いずい」といい
滋養、強壮、胃潰瘍、強精薬として煎服する。
ねんざには根をすりおろして、キハダの粉末をまぜ
酢でねって冷湿布にするとよい。

日本名は「トコロ」に似た地下茎に甘味があるところからの名。

茎の中部以上は明らかな稜があって切り口が角ばる。
よく似た「ナルコユリ」はほとんど稜がなく、切り口はほぼ円形。
また、「ナルコユリ」の方は花の付け根に短い緑色の部分があるのが特徴。










クワ(クワ科)



日本全土に分布。雌雄異株で、4〜6月に花が咲き
果実は6〜7月に実り、赤から黒に変わる。
甘く、食用になる。果実酒にも用いる。
和名のクワは「食葉(くは)」「蚕葉(こは)」が転じて
名づけられたものだという。
葉は養蚕に、樹皮は繊維、パルプ・縄に、
材は黄褐色で相が美しく建築材や家具、楽器などに使われる。
漢方では根皮を桑白皮(そうはくひ)といい、消炎、利尿、咳止め、緩下薬として用いる。
民間では葉を高血圧、動脈硬化、強壮などに茶剤として飲用する。